先日、母校の校友会主催のイベントで就活生との懇談会に参加した。後輩達からの就職に関する質問にOB・OGが思い思いに回答する場である。初めて参加した筆者にとっては、数十年前の自分と対峙しているデジャブの感があり、当時の自分に伝えたかったことが次々にでてきて予定の2時間があっという間に終わってしまった。働くという意識に全く欠けていた当時の自分と比べると後輩達は実に真面目だというのが率直な印象であった。 彼らの質問は、「日常の仕事はどんな感じですか?」、「具体的な人事の仕事は何ですか?」、「なぜ、〇〇という会社を選んだのですか?」など、数十年間サラリーマン生活をした身からすると驚きはなかったが、こちらから伝えたのは、「今の会社にずっといるつもりではなく、転職の可能性も考えた方が良い。ただし、10年くらいは一つのところで頑張って専門性を身につけてから」ということである。実体験からの確信である。 時間不足もあり、伝えられなかったことがある。短時間の面接の印象で良いと判断して入社したらブラック企業だった場合はどうするかということである。実際、就活生と企業側では、企業側が有する情報量へのアクセス可能量が違いすぎる。労働法で明示が義務付けられている給与や休日数等の労働条件などのデータだけでは企業の働きやすさは分からない。企業文化や慣習、上司や同僚との関係、職場の雰囲気などは実際に勤めてみなければ分からない。インターンシップにしても、ワークショップなど隔離された環境で活動するのではあまり意味はなく、実際のオフィスで先輩社員に囲まれて1週間程度勤務することで、分かることが多い。良いか悪いかではなく、相性の問題でもあり、体育会系的な指示命令系統が厳しい職場に、伸び伸びタイプの新入社員が入ったらうまくいかないであろう。一般に採用プロセスでは、媒体誌を含め格好の良いところだけを見せようとするのが企業の傾向であるから、書いてあることやOB・OGの話を鵜呑みにして入社すると、こんなはずではなかったということにもなりかねない。 さて、運悪くブラック企業に入社してしまった場合の対処法は3つある。 1.これも修行と思ってひたすら耐えてその会社で頑張り抜く: これまでの日本人によくあるタイプの行動パターンであり、大企業で人事異動やローテーションの仕組みがきちんとしているところでは、この行動もそれなりに合理性がある。ひどい上司にぶちあたっても、3~5年もすれば人事異動によって悲惨な組み合せから抜け出せる可能性があるからである。もっとも会社全体のカルチャーがブラックだったらローテーションしても逃げ道はない。 2.心の平安を得る方法や、上司に合わせた対応法を実践する: ひどい上司やサービス残業が当たり前の職場だとしても、アンガーマネジメントやマインドフルネスの手法を学んだり、哲学書や宗教書を読むことで自分の心を平安に保つ工夫をする。これもひとつの手である。 他人は変えられないが自分は変えられるからであり、このように悟ることができればストレスは減るかもしれない。 If you wanna make the world a better place 世の中をよくしたいなら Take a look at yourself and then make a change 自分を振り返って自ら変えることさ “Man in the mirror” Michael Jackson 円滑なコミュニケーションを取るのが難しい上司はどこにでもいるが、ドラマクィーン(またはキング)、ナルシスト、マイクロマネジメント、気分屋など様々なタイプがあり、それぞれに応じた対処法がある。経験や社外研修を通じてその方法を学んでいくのもまた一つの方法である。 3.会社を辞める覚悟で闘う: 「長いのものには巻かれろ」は、古来からの日本人の知恵かもしれないが、あまりに自分の価値観や正義に反する環境にいながらただ従順に日々を流すことで良いのだろうか? 人それぞれに譲れない一線のレベルは異なるだろうが、それを超えてしまう場合には、会社を辞める覚悟で闘うこともときには必要だと思う。 幸い、近年の日本の労働行政(&司法)は、パワーハラスメントや労働条件に係るコンプライアンスについては、労働者保護(当然ではあるが)の方向になっており、ADRの手段としては、労働局による総合労働相談センター、紛争調整委員会によるあっせん、労働委員会によるあっせん、労働審判など様々なものがあり、上記の内、労働審判を除けば無料でサポートを受けられる。必要な情報はインターネットから簡単に入手できるし、相談は電話でもできることが多い。企業に労基法違反(賃金不払い、違法残業等)がある場合は、匿名で管轄の労働基準監督署に通報すれば然るべき対処をしてくれずはずであり、このような通報をしたことを理由に会社が従業員に不利な取り扱いをすることは禁止されている。 民主主義国家の日本では、真におかしいことには黙っていないで声を上げる、然るべき対抗措置を取る、という選択肢はあり、一人ひとりの従業員がこの行動を取らない限り、ブラック企業はなくならないと思われる。 ブラック企業から給与をもらうことと引き換えに、精神の自由を明け渡し奴隷のように働くのか、「職業選択の自由」をよりどころに闘うか、どちらを選ぶかは、あなたの意思と、あなたの置かれた(扶養家族がいるため当面は我慢するしかない等の)環境による。 だが、皆が見て見ぬふりをしていたら悪弊は変わらないし、パワハラ経営者や管理者もなくならない・・・これだけは確実に言えることであるである。ほんの少しの勇気・・・これが必要ではないだろうか。 以上
会社勤めをしたことがある人なら、言われなくても分かるトピックであろうが、過去の経験を踏まえ、働きやすく明るい会社(職場)とそうでない会社(職場)の違いを整理してみたので紹介する。 明るい職場や会社の特徴は、少なくとも4つある。 1.笑顔:...
昨年末に上梓した拙著「外資系企業で働くー人事から見た日本企業との違いと生き抜く知恵」の中で、理想の会社について以下のような記述をした。...