コミュニケーションツールとしての日本語と英語

コミュニケーションの8割を英語で行う仕事を始めて3ヶ月が過ぎた。部分的に英語を使う仕事を長年してきたものの、本格的に使うとこれほどまでに効率が悪くなることに気づいたのは初めての経験である。

読む領域では、英語は、漢字・ひらがな・カタカナという3種類の文字を駆使して表現する日本語に比べると効率が悪いコミュニケーションツールであることを痛感する。表音文字のアルファベットとは違い、漢字という表意文字を見れば言葉の意味を瞬時に把握できるからである。漢字ならたやすく判別できる従業員の名前が、Yuri, Yumi, Yuki…と書かれているがために、余計な時間をかけて名簿と格闘する日々を過ごしている。
 
書くことについては、中学・高校で学んだ文法をキチンと守って書けば、コミュニケーション上の支障はない。米国人が好んで使うAbbreviation(略語)やスラングは、英語を国際言語として使用する環境では差し控えることが前提であり、今の職場ではそれが徹底されているようである。
日本語で書くよりも英作文に時間がかかるのはやむを得ないが、結論と理由を簡潔に表現することで文字量と労力を軽減することはできる。
ちなみに筆者の経験では、日本人・外国人を問わず、1行で済むのに3行も4行も書く人がいるが(中身がない)。社内なのに不要な自己紹介をしたり、やたらとへりくだった表現をしたり等 「ビジネスメールは相手の貴重な時間を奪うこと」と認識すれば、短ければ短いほどよいのである。最近は、末尾に”Regards”を書くことすら止めてしまった(社内の人間に対してだけである)。
 
会話は、慣れてしまえば英語の方が楽なことすらある。リズムとスピード感があり、気分も高揚する。英米人など英語ネイティブだけの人員構成でなければ、リスニングで苦労することもさほどない。(発音や速度を含め)平均的日本人と同レベルの英語を話す外国人が多いからである。「英米人のための土着言語から世界言語に変化した英語をコミュニケーション手段として使うのだ」と割り切れば、(映画に出てくる)米国人俳優の発音を真似することに多大な労力をかける意味はあまりない。そんな時間があったら業務の専門性を磨くことに労力をかける方がキャリアの形成には有益である。

ただし、米国人だけの会話に参加する場合はリスニングの難度が上がることを覚悟すべきである。急に速度が上がる! 個人的にはイギリス人の英語の方が聞き取りやすい。興味がある人は、ポールマッカートニーがビートルズ時代の思い出を語った以下のURLにアクセスして見てほしい。

https://lnkd.in/gQT6YBFK
 
 
日本人は英語ができない国民だと否定的に語られることが多いが、その理由の一端は、日本語が、日常的な話題から科学等の学術分野に至るまで広範囲なテーマを表現できる数少ない言語の一つだからである。日本で育った人間は、漢字・ひらがな・カタカナの3種のツールを駆使した日本語で読み、書き、論理的に考える習慣ができているために、外国語で仕事をする場合には、頭の中の回路をいったん切り替える必要がある。そのために効率が下がることを体験しつつも、日本語という自国語で考えられる幸せを同時に感じる毎日である。

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