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70歳までの就業機会確保の現状について

2022113日に、株式会社マイナビが採用担当者(2,036名)を対象に調査した、「マイナビ 人材ニーズ調査」結果が公開された。

20214月に施行された「改正高年齢者雇用安定法」で努力義務とされた「70歳までの就業機会確保」に、どのように対応しているか聞いたところ、全体で63.1%がなんらかの対応を行ったと回答した。「70歳までの継続雇用制度の導入(自社にて継続雇用、再雇用制度含む)」が19.8%で最多、次いで、「希望するときは、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度を導入」が17.3%となっている。

 

中小企業中心の人材コンサルティングを行う者としての率直な感想の第一は、6割を超える企業の対応率は意外に高いということである。総務省統計局の「労働力調査」によれば、2020年の60歳から64歳までの労働力率85.3%に対し、65歳以上は35.1%の低水準にとどまっているが、上記の通りの企業対応が進めば比率はこれから徐々に上がっていくものと思われる。

 

感想の第二は、就業機会確保策のうちで2番目に高いものが「業務請負」であることである。

企業としては、少子化に伴う労働力人口の減少を埋めるだけでなく、経験・スキルの活用の視点からも、高齢者の継続的活用に一定のメリットを感じていると思われるが、他方、能力・意欲・体力の面でばらつきの大きい高齢者を雇用し続けることのリスクも感じているだろう。その辺の折衷案として、「業務委託」に目を付けたのではないだろうか。

 

就業者側からすれば、定年を機に報酬ダウンとセットになった継続雇用・再雇用制度で生活を守れることの安定感と引き換えに、一歩引いて若手のサポートに徹する役回りに不完全燃焼する向きも少なくないのではなかろうか。その点で、社外で通用する経験・スキルを持つ者にとっては、「業務請負」は定年を機に新しいキャリアを開拓しようとするチャンスになる可能性がある。

 

問題は、知識・経験を有する個人と、ニーズを有する企業とのマッチングである。長年ひとつの企業で働いてきた人間がいきなり独力で顧客を開拓するのは難しい。知識・経験者を「顧問」として登録させ、必要とする企業に紹介するビジネスが伸びている理由でもある。しかし、間に紹介業者が入ることで利用企業のコストは増え、その分、知識・経験の提供者の手取りが減る。

 

法改正が必要になるだろうが、ハローワークのような公的職業紹介機関で、雇用だけでなく、業務請負案件のあっせん・紹介もできるようにすれば、シルバー人材市場はもっと活性化するのではないか・・・。向かいのお宅の植木の剪定にきたシルバー人材センターの車を見て感じた次第である。