サラリーマンは、イエスマンでやれば良いのか

「三菱電機や東芝、みずほ銀行など大企業で、今年は不祥事が相次いだ。各社の調査報告書から見えてくるのは「もの言えぬ閉鎖的な組織」だ・・・」と朝日新聞デジタルの記事が紹介した今年、2021年ももうすぐ終わる。

 

筆者が人事コンサル業を始めて3年目に入ろうとしているが、企業・組織内の「もの言うカルチャー」をつぶさに観察する機会に接し、改めて考えさせられるものがある。

社長など企業トップに堂々と意見を言う若手がいる会社もあれば、トップが言いだすと執行役員クラスを含め誰もが水が引いたように発言しなくなる組織もある。この違いはどこから来るかと言えば、トップの個性もさることながら、部下としてどのように立ち回るかについての一種のスキルに関係していると感じており、以前、拙著で「7:3の法則」として以下のように紹介した。

 

「サラリーマンをやっていく上で、上司との関係ほど難しいものはない。外資系企業では、直属上司が自らの処遇に及ぼす影響が強いので、日本企業にいるとき以上に上司の顔色を窺う。事実、採用面接で過去の転職理由を聞くと、上司が替わったことを挙げる例が極めて多い

新たな上司とうまくやっていくために、ひたすら「イエスマン」を演じる輩がいるが、無論、これでは駄目である。上司が間違った判断をしたときでも「ハイハイ」と言うことを聞いていたら、組織として悪い方向に行くだけだからである。

 

上司の指示や命令に一々反駁するような部下でも困る。こんな部下は上司として使いづらくて仕方がないし、組織効率も良くない。部下の部下からすればどちらの上司の言うことを聞いたら良いのか迷うばかりでチームとしてのパフォーマンスも落ちる。

 

筆者の経験では、7:3くらいの感覚で上司の指示・命令に対して、「イエス・ノー」のコミュニケーションをするのが良いと思われる(これを勝手に「7:3の法則」と呼んでいる)。7割くらいは素直に指示通りに動くが、3割くらいの頻度で修正・反対の意見や提案する。良識ある上司であれば部下からの苦言・提言を聞く耳があり、その結果良い結論に導くことができれば組織として良いパフォーマンスを出すことができ、最終的に上司と本人の評価も上がるはずだからである。ロボットのような「イエスマン」だけを部下に持ちたいと思う上司はそう多くはないであろう。」

 

トップの考えと違う意見をするには、ある程度の勇気が必要である。雇用保障や出世にかかわるあらゆるリスクを避けるのに100%のゴマすりがベストかといえば、そうでもない。そんなことを続けていれば周囲の人間にも底を見透かされ、トップが失脚したりすれば同様の運命にならないとも限らない。組織や自分にとってベストと思われる意見をTPOに応じて出す勇気は必要であると思っている。

イラスト作成:葉ヶ竹霧