パーソル総合研究所が5月28日、「シニア従業員とその同僚の就労意識に関する定量調査」結果を発表した。定年後再雇用者のうち過半数は職務が変わらないものの、平均では年収が44.3%減っている。また、50代以上のシニア人材の処遇に対しては、若い年代の社員ほど不公平感が強く、20代ではシニア人材が得ている給料や評価に対して、約3割が不公平感を抱いている結果となった。
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定年後の給与水準に関するまとまった調査は多くないが、定年を境に5割近くも給与がダウンしているという調査結果は、筆者の見聞情報とも大した乖離はない。元々の年収が高かった大企業のシニア人材では7割ダウンのような例も聞く。
70歳までの就業確保に向けて法改正もなされているが、現状とのギャップは大きい。若いときは安い賃金でがむしゃらに働くが、年齢・勤続とともに処遇を引き上げ、定年までの約40年間の総報酬とパフォーマンスの帳尻を合わせる日本的長期処遇制度をどうするかという問題でもある。
改善のための論点はいくつかある。
①市場価値を超えて年功的に賃金が上がっていく日本的賃金処遇体系を見直すこと
②定年を機に、シニア人材自身が気持ちを切替えること(保護された年功制契約から、市場価値に基づく契約への転換)
③若年層にとって目標になるようなシニア人材の働き方(仕組みを含む)を実現すること
各々についての詳細なコメントは控えるが、若者に不満を持たれないためには、年齢・勤続にかかわらずパフォーマンスが伸びない限り賃金カーブをフラットにすればよいし、外資系企業の処遇体系にはそのような例が多い。
ただし、そのような処遇制度が若者の将来に希望を持たせることができるかどうかは定かでない。日本経済が全体として成長を続けない限り、生涯賃金は増えないと考えれば、早めにもらうのか、楽しみを後にとっておくのかという選択の問題になる(朝三暮四)。
また、若いときはシニアの働き方に不満を持っていても、自分が管理職になり高い給与をもらうようになるとそれが当たり前の感覚になり、いつしか「働かないおじさん」化して後輩から疎まれるようにならないとも限らない。
凡庸な結論になるが、自分の能力・スキルと市場価値のバランスを常に意識し、健康管理に留意しながら、各々の自己実現に向けていきいきと働くことを目指すほかはないと思われる。
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