一般社団法人日本経済団体連合会の機関紙、「週間経団連タイムズ」に8回シリーズで連載を始めました。今回は第2回目の原稿を紹介させていただきます。
第二回 日本型雇用システムのPros & Cons(人材タイプ)
(2020年4月9日号)
人は、能力と環境の組合せにより成長する。日本の伝統的大企業と外資系に勤める人材の質やレベルに大きな違いはないと思われるが、働く環境が異なると、マインドセット(Mindset、心構え)も変わってくる。外部労働市場を意識するかどうかがマインドセットの分かれ目になり、筆者の観察によれば、両者の人材タイプは以下の表に示す通り、かなり異なる。
「メンバーシップ」型ともいわれる日本型雇用システムでは、求職者は「就職」より「就社」の意識でビジネス社会に入る。職務の割付けに広範な裁量権を持つ会社が「人事異動」の名の下に具体的な職務を命令することになるが、ローテーションや転勤を含む人事異動があることを前提に入社している社員は、基本的に会社(のシステム)を信頼しており、忠誠心も高い。長期勤続を念頭に、先輩、同僚、後輩と協力しながら成長しようとする志向性がある点などが日本企業人材のPros(長所)と言える。
しかし、長期勤続を前提とする日本型雇用システムの下では、自らの競争相手は同期を中心とする社内の人間になり、社内での昇進を目標に不平を言いつつも定年まで勤めあげる意欲が強い。意識が内向きになり、社外の労働市場に目を向けることは少ない。自分の経験とスキルの定期的な棚卸をして職務経歴書(Curriculum Vitae)を書く習慣もなく、会社の業績が落ち込みリストラの話が出てから慌てることになる。事業構造転換などの変化について行けず、かといって外部市場に出る勇気もないから、変革に対する抵抗勢力として社内に留まり続ける。これは大きなCons(短所)である。
他方、外資系に勤める人の多くは、自分のキャリアを常に意識しており、会社に不満を持てば転職することを厭わない。いざとなれば「転職」というキャリアカードを使えるから自分の処遇に不満があれば、「もっと給与を上げよ」などと躊躇せず会社に要求する。自分の得点にならないことやチームワークに興味がない人も多い。
筆者は、様々なタイプの人材に接した結果、「外部市場と自分のキャリア形成を常に意識して研鑽しつつも、チームワークと組織の成果を重視する」、伝統的日本企業と外資系企業の中間くらいの人材タイプがちょうど良いのではないかと感じている。