外資系企業の幹部ポジションに応募する場合、外国人幹部との英語によるインタビューは避けて通れない関門である。
採用側として外国人幹部のインタビューに立ち会ったとき、英語は完璧、ジョークの返し方や間合いも絶妙、欧米大学のMBAも取得しており、誰もが知るBlue Chip Company(一流企業)での華々しい経歴を有する候補者でも、面接の中で自分を適切に表現できないと落とされる例を目の当たりにした。
自身も応募者として外国人幹部のインタビューを受けたことがあり、これらの経験を踏まえ、インタビューにパスするための必要条件をまとめてみる(以下の文章の一部は、拙著「外資系企業で働くー人事から見た日本企業との違いと生き抜く知恵」(労働新聞社)からの引用である)。
(1) かなりの水準の英語を使えること:
美しい流暢な英語を話せるのは結構なことだが、それよりもまずは、相手の言っていることを正確に聞き取れるリスニング能力の方が重要だと思う。英語を母国語にする国民には、相手が英語を理解すると分かるとおかまいなしに早口でまくしたてる人が多いと感じる。相手の意図することを取り違えたら、その後の会話は迷路にはまってしまいぐだぐだになる。聞き取れなかったら堂々と、Pardon me(もう一度質問をお願いします )と言うべきである。
※TOEICのスコアと会話能力に必ずしも相関関係がないことを経験から学んでいるので、判断が難しいところであるが、せめて800点以上はないと、外国人幹部との面接にパスするのは難しいのではないかと思われる。
(2) 想定される質問に対する答えを事前に準備しておく:
採用ポジションを前提とした想定質問に対する回答を、まずは日本語で準備しておくことだ。想定質問の例は、
「入社したらまず何をするつもりですか?」
「入社したらどのような貢献ができると考えますか?」
「あなたのビジネス上の強みは何ですか?」
等である。
採用側と応募者側には、会社に関する情報量に圧倒的な差があるから、完璧な答えなど期待していないが、限られた情報の中でどのように考え提案してくるのかを見ているのである。応募者には今までの会社の経験・昔話ばかりを長々と続けるものの、それらを未来にどう活かすか(入社したらどのように貢献するのか)を上手に説明できない人が多い。よほどの面白い物語でない限り、他人の昔話を我慢して聴き続けられる人は少ない。
(3) Chemistry(相性):
結婚と同様に扱うのは強引かもしれないが、採用も所詮は相性と直感の問題である(一緒になってみなければ本当のところは分からないのである)。どんなに自分は優秀だと思っても、相手が「この人間と一緒に働きたい」と思うかどうかは相手が決めることで、自分ではコントロールできない。だが、印象を良くするための工夫ならできるだろう。顔の骨格は変えられないにしても、身だしなみを整えたり、普段からウエイトトレーニング等により精悍な体つきを維持することは努力次第でできる。筆者の印象では、欧米人幹部には(ハロー効果に過ぎない場合もあるのだが)見た目を重視する人が多いように思う。
それでも決まらなかったら、「この自分を評価しない会社なんかこちらから願い下げだ!、機会はいくらでも他にある。」と頭を切り替えて、活動先を変えることである。
LinkedInを通じて英国の人材エージェントからコンタクトがあった際に、 “Behavioral Competency Interview”というインタビュー手法を知った(上記の(2)に関わることである)。その後、外国人幹部からこのタイプのインタビューを幾度か受けた。この経験から、外資系企業に転職したいと考える人にはとりわけ重要な面接スキルであると確信したので、次回の投稿で
概説する。